LDHホイル

愛媛大学農学部の松枝直人教授のグループでが開発された飲用水浄化ツールの説明をします.

どうしてLDHホイル?

容易に手に入る材料で、誰でも容易にできるツールの開発を目指しました。今回の取り組みの協力者である、愛媛大学農学部の松枝直人教授は、発展途上国において大腸菌などで汚染された水を飲用水として浄化するツールを開発してきました。WHO/UNICEFによると、世界では約20億人が糞便により汚染された水を飲んでおり、毎年48万人以上が死亡しており、そのほとんどが乳幼児です。各国政府は煮沸・消毒液を推奨しているものの、「手間がかかる」、「においが気になる」などの理由で実際は、そのまま飲むケースが多いです。そこで、入手しやすい素材でできて、かつ手軽に作成してストックできるツールが必要と考えられます。開発したLDHホイルはこれらの問題を解決できると考えています。

原理・方法

大腸菌などに汚染された水を浄化するツールは、LDHホイルという名前のものです。LDH(Layered Double Hydroxide)とは、層状水酸化物とよばれるもので、簡単に説明すると全体として正電荷を帯びた化合物です。下図は、海水と水酸化ナトリウムとアルミニウムホイルで作る(作り方など詳細は後述)ときにできるLDHの概略図です。海水はマグネシウムイオンを、アルミホイルはアルミニウムイオンを、水酸化ナトリウムは水酸化物イオンを供給します。アルミニウム原子、マグネシウムイオン、水酸化物イオンがであってできる正電荷をもった化合物がLDHです。
井戸の画像

次に、どうやって大腸菌を除去できるか?を説明します。下図は、アルミホイルにLDHを付着させたLDHホイルが大腸菌と引きあっている様子を示しています。実は、バクテリアやウィルスの表面は負電荷を帯びており、正電荷に帯電したLDHと電気の相互作用(クーロン力)によりLDHに吸着されます。
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海水を用いたLDHホイルの作り方

【準備するもの】
アルミホイル(厚さ20μmのもの)、海水、水酸化ナトリウム、水切りネット

①0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、水切りネットに入れたアルミホイルを入れる。
※アルミの酸化被膜をとる前処理であり、水素の泡が出ます。
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②海水1Lと1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10mLの混合液にSTEP①のアルミホイルを、水切りネットごと入れて1日つけておく。終わったら自然乾燥させて完成です。
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検証結果

市販の大腸菌(病原性を有しない)を添加した蒸留水で検証したところ、はじめ1mLあたり960匹いた大腸菌が2時間で0匹になり、24時間後でも0匹のままでした(下表参照)。ブランク(B)とは、LDHホイル無しの試験水で、サンプル(S)とはLDH入りの試験水です。なお、CFU/mLとは1mLあたりの生菌数で、1000CFUは世界的にみてもかなり大腸菌が多い値です。
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次に、弓削島の井戸水(大腸菌が検出される)のLDHホイルの検証結果についてです(下表参照)。検証に使用した井戸水は、雨が降った次の日に採水しました。雨の日の直後は、周辺の農地からの肥料の流入などで、大腸菌の数が増える傾向にあります。検証によって、はじめ4000匹であった大腸菌数が、20分後に980匹に減少していることが分かりました。0になっていないことから、LDHホイルの性能(吸着能)向上の必要性が示唆され、現在取り組んでいます。これまでのところ、大腸菌の増殖の仕方は温度と密接な関係があり、温度が高いとよく増えることが分かりました。
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下図は実際の検証の結果の写真です。
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